2013年、一般財団に移行するとともに、大阪市によるプロポーザルを勝ち取り運営形態が変わりました。その当時、「インテックス大阪」で催されていた催事・展示会は年間160本ほどで、現在の70%ぐらいの本数でした。私は関西エリアの主催者様を中心に営業し、一人で年間90〜100本近くの催事を担当。そのうち約9割が毎年、同じ時期に展示会を催してくださる既存顧客でした。

従来は大阪市へ展示館収入などを大阪市へお渡ししたうえで、運営に必要な管理費をいただいていましたが、2013年度からは賃貸借契約となりました。収入はすべて私たちのものになり、そこから大阪市への賃料はじめ経費を支払うことになりました。まさに、自分の食い扶持は自分で稼ぐことになり、自由度が高まりましたが、同時にリスクも高まりました。
そこで、収益向上のため、民間企業勤務で培った経験をフルに活かし、催事誘致の営業活動により一層注力し、展示館の空きをできる限り埋めていきました。

関西圏で、5,000㎡以上の展示館を複数有する展示会場は「インテックス大阪」しかなく、競合相手となるのは、東京ビッグサイトや幕張メッセ、パシフィコ横浜、ポートメッセなごやなど関東・東海の大型展示会場でした。2013年以前から首都圏で開催されている見本市・展示会をインテックス大阪でも開催してもらうよう、誘致営業をかけていましたが、規模が大きい「B to B」の催事は計画から開催まで年単位の時間を要するうえ、主催できる団体や企業の数も少なく、誘致実現まで時間がかかります。

そこで私は、「B to B」の誘致活動と並行して、誘致までそれほど時間がかからない、一般のお客様にご来場いただく「B to C」イベントの誘致に動いたのです。この頃、コンサートやアイドルの握手会、「コミケ」と呼ばれる「同人誌販売会」、就活イベント・合同企業説明会などの需要が増加していたこともあり、このタイミングに乗じて「B to C」の催事をできる限り引き受けようと営業をかけました。

展示館の稼働が上がることにより、展示館収入が増えるだけでなく、館内の売店やレストラン、コンビニエンスストアなどの誘致が実現し、サービス向上と更なる収益力の強化につながりました。

こうして程なく、収入の大幅な増加を実現し、現在の活況につながる下地を作ることができました。

私たち国際部は「インテックス大阪」の運営管理とは別に大阪市の国際関連業務を受託して仕事をしています。まず、国際部の前身は、財団設立から約10年後の1994年に設立されました。当時の国際部には「ワールドトレードセンター課」と「ビジネスパートナー都市課」があり、いずれも大阪市の業務を遂行していました。

大阪市は、1988年の香港との提携をスタートにアジア・オセアニア地域を中心とした海外の都市と“姉妹都市のビジネス版”といえる「ビジネスパートナー都市提携」を結び、経済交流活動を続けています。これを担当していた「ビジネスパートナー都市課」は1995年に財団から離れ、大阪市の任意団体として発足した「BPCネットワークセンター（大阪ビジネスパートナー都市交流協議会／IBPC大阪の前身）」に移されました。ところが2003年の組織再編で財団の国際部と統合、「経済交流課」と「企業誘致課」という2つの課が誕生しました。「経済交流課」は、ワールドトレードセンターネットワーク関連と、ビジネスパートナー都市との経済交流活動を担当する部署で、新設された「企業誘致課」は、国内外の企業を大阪市内に誘致して立地支援を行い、税収と雇用の向上を図る部署です。

その後、2011年に大阪市がワールドトレードセンター連合を脱退。2013年から、これまで随意契約で継続してきた大阪市の事業が公開プロポーザル方式に変更となり、ビジネスパートナー都市との経済交流活動と企業誘致の2本の事業が、毎年プロポーザル方式によるコンペとなったため、国際部は毎年1回、大阪市に提案書を提出し、コンペで事業を獲得しています。

なお、企業誘致の実績としては、2003年から今まで大体500社近くの企業誘致に成功。そのうちの4割が日本企業。6割が外資系企業で、その半数近くが中国企業です。中国企業の中には東京進出を選ぶ企業もありますが、大阪人である我々の方が「腹を割って話せる」ところ、大阪の方が立地しやすいという点が魅力だということです。

国際部では現在、大阪の企業の海外進出もサポートしていますが、近ごろ多いのは、中国をはじめ、ベトナム、タイ、日本よりも人口が多いインドネシアなど東南アジアの大きな市場に対する販路開拓です。さらに近年は、海外のMICEをできるだけ多く大阪に誘致していく活動にも注力しています。

私の前職は民間企業の経理担当でした。しかし、当時の財団の経理業務は大阪市の手法に準じており大変戸惑いました。上司は大阪市の職員で定期的に入れ替わることもあり、経理業務については任される部分が多く、大変苦労しましたが、今となってはとても貴重な経験をさせてもらったと感じています。

一番の思い出であり、苦労したのは公益法人制度改革への対応です。その手続に関する参考書も、内閣府からの指導もなかったので、2011年から税理士さんと私と、もう一人の経理職員で度々勉強会を開き、税理士さんにチェックをしていただきながら書類を作成し、疑問点は勉強会で相談。それでも「多分そうでしょうね」という曖昧な回答しか得られないまま書類を作成しては霞ヶ関まで相談に行き、修正を指示され出直すことを何度も繰り返しました。最終的に100ページほどの書類と、想定問答集も作成して国の審査をクリアし、ようやく2013年に一般財団法人への移行手続が完了しました。20年を超える財団勤務の中でこれ以上に辛かったものはありませんでしたが、あの時の経験は大切な糧となり、私の心の支えとなっています。

現在、インテックス事業本部事務統括担当にて、展示館関係の請求書発行および入金管理などを行っています。展示館に関する請求書の発行項目は、展示館利用の延長料金、会議室の追加利用、各種備品レンタル料、駐車場代、光熱水費など多岐にわたります。その他、売店・レストランに関する請求書も発行します。

また、インテックス事業の予算・決算見込の集約・精査や稟議書のチェックも行っています。財団はほとんどの職員が転職組ですが、中には財団に来て初めて収支の見通しを立てる職員もいます。精査だけでなく、サポートすることも重要な業務となっています。

2012年に金融の国際会議「Sibos」を引き受けた後、「G20大阪サミット2019」をインテックス大阪で開催することになりました。G20は、日本初開催でしたので誰も経験したことがなかった訳です。外務省の方々と打ち合わせしたり、大阪市・大阪府といった行政からもサポートをいただいたりして非常に大きなイベントを、会場として引き受けて管理運営をしました。

ことあるごとに情報交換を行い、情報共有を徹底。何よりも第一に、私たちが為すべきミッションの本質である「会場を提供する側の立場として不備がないよう徹底して無駄のない動きをする」、このことをスタッフ全員に指導しました。

G20を経験したことで、特に若いスタッフに関しては良い勉強になったと思います。国の官僚、総理、副総理、官房長官が視察にいらっしゃったり、警視庁・警察署・消防局といったありとあらゆる機関がこの会議のために動いたりする中で、過去の商談・交渉・コミュニケーションでは経験したことのないレベルの対応を、全て私たちが窓口として受けました。

各スタッフを保健所担当、消防署担当、警察担当と振り分け、情報・報告を受けた場合の伝達や対応について、どのように質問されたのか、どういうふうに動かないと駄目なのか、模索を重ねながらできる限りベターの状態を実現するため、役員に情報を上げながら全員一丸となって挑みました。国家レベルの情報管理やサービスを経験し、スタッフ全員が大きく成長できたという手応えがあります。